二酸化炭素の補給方法

二酸化炭素 (CO2)

二酸化炭素は無臭の気体で、私たちが呼吸する空気中には微量にしか含まれていない。空気中のわずか0.04%ですが、地球上のすべての生命にとって欠かすことのできない重要な成分です。

植物は約80〜90%の炭素と水、それに窒素、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、それに微量元素から構成されています。植物に含まれる炭素のほとんどは、空気中の二酸化炭素を原料としている。

植物は日照時間中に、気孔とよばれる葉の穴から二酸化炭素を取り入れます。その際に酸素をはき出します。この作用を光合成といいます。このはき出された酸素は、地球上の人間や動物、海洋生物に使われます。植物の光合成がなければ、動物も人間も生きていくことができません。

地球の大気中に含まれる酸素の量はおよそ20%です。そのほとんどが植物の活動によって生じたものです。光合成によって二酸化炭素と水が結合して、糖類と酸素分子が作られます。ブドウ糖(C6H12O6)などの単糖は、植物のエネルギーとなり、炭水化物・アミノ酸・たんぱく質・繊維質・葉・根・幹・花といったより複雑な植物のパーツを形成していきます。

私たち動物が植物のはき出した酸素を吸い込み、植物に必要な二酸化炭素をはき出す、という真の共生関係がそこにあります。太古の昔-地球上に動物がまだ出現しておらず植物しか存在していない時代の大気圏の様子は、今とはすっかり違っていました。二酸化炭素の自然発生源のひとつである火山活動がより盛んで、大気中の二酸化炭素の含有量は現在の3~4倍はありました。植物は力強く繁殖して、巨大な木生シダが旺盛に繁栄していました。私たちが恩恵を受けている石炭や石油、天然ガスなどの鉱床は、この時代の植物から作られています。

現代の空気中には、植物にとって有益な二酸化炭素の量が増えています。これは、人類がより多くの燃料を燃やしているため、副産物としてより多くの二酸化炭素が発生しているためです。このわずか60年の間に、大気中の二酸化炭素は270ppmから410ppm以上へと増加したのだ。多くの科学者は、温室効果が原因であると懸念している。大気中の二酸化炭素が増えれば増えるほど、地球は高温になる。急激な温暖化は、氷床を溶かし、沿岸の都市を浸水させ、砂漠を拡大させ、飢餓を引き起こし、深刻な気候変動を引き起こす。これらの現象は自然の摂理である。増え続ける二酸化炭素は、大量に海に吸収され、地球上の全植物の90%を占める藻類やプランクトンの餌となり、残りの10%は地上の植物にも吸収されている。このように大気中の二酸化炭素の減少が調節されているのです。現在、科学者たちは、環境の安定化要因である自然の摂理(自己調整機能)の解明に取り組んでいる。

二酸化炭素の補給について

生物学者や植物生理学者は、空気中の二酸化炭素含有率が高いほど植物成長に有益であると認識しています。園芸家や温室栽培家は、二酸化炭素補給装置を使用して植物の成長率を高め、よい収穫結果を出しています。

ここ最近の人工光による室内栽培・温室栽培の台頭や、水耕栽培技術の進歩によって、二酸化炭素を補給する必要性が急激に増えています。閉ざされた温室や室内栽培室では、二酸化炭素を使い果たし成長が止まるという事態がしばしば起きています。二酸化炭素量の増減が植物の成長率をどう変化させるか、下のグラフを参照にしてみてください。

[CO2図表]

200ppm以下では光合成に必要な二酸化炭素が不足し、成長は基本的に止まってしまう。このグラフから、二酸化炭素の量を増やすと、通常の2倍以上の成長速度になることがわかります。2000ppmを超えると植物に、4000ppmを超えると人間にも害を及ぼすようになる。

HID(高輝度放電)ライトシステムや水耕栽培システム、温度・湿度などの空調管理機器、成長率・品質・サイズ・収穫時期を決めるバランスのとれた水耕専用肥料によって理想的な栽培環境が整うようになり、必要な二酸化炭素量を決定できるようになりました。

二酸化炭素を補給するには、5つの方式があります。

  1. 炭化水素燃料を燃やす
  2. 圧縮して詰められた二酸化炭素(液化炭酸ガス)を使う
  3. ドライアイスを使う
  4. 発酵させる
  5. 有機物を腐らせる

この5つをひとつずつ検証してみましょう。二酸化炭素補給時の利点と欠点を実用比較するために、高さ・幅・奥行き2メートルもしくは8立方メートルの栽培室を基準にして考えていきます。

1.炭化水素燃料を燃やす

一般的な燃料としては、プロパンガス、ブタンガス、エチルアルコール、天然ガスなどが使用されている。これらの燃料を燃やすと、青、白、無色の炎が上がり、有用な二酸化炭素が発生します。赤やオレンジ、黄色の炎の場合は、不完全燃焼のため一酸化炭素が発生します。この一酸化炭素は、どんなに少量でも植物にも人間にも危険です。硫黄や硫黄化合物を含む燃料は、有毒な副生成物を発生させるため、使用しないでください。

これらの燃料を燃やす業務用の二酸化炭素発生装置の多くは大きすぎるので、小規模の温室や室内栽培には不向きです。小さなものでは、コールマンのランタンやブンゼンバーナー(理科の実験で使用するガスバーナー)や小さなガスストーブなどが使えます。どの器具でもすべて熱が発生するので空調設備が必要になりますが、冬期や寒冷地での栽培には向いているといえます。

二酸化炭素の補給率は、使う種類の燃料の量によってコントロールします。プロパンガス、ブタンガス、天然ガスを使う二酸化炭素補給装置の場合は、1キロの燃料を燃やすと、およそ3キロの二酸化炭素と1.5キロの水蒸気が発生します。同時に約12300キロカロリーの熱も発生します。この数値は、その他の燃料を使った場合は異なります。

これを高さ・幅・奥行き2メートルの基準栽培室で考えると、エチルアルコールやメチルアルコールを20グラム/日の割合でガスランプやバーナーで使用すると、部屋がちゃんと密閉されていれば二酸化炭素含有率を1300ppmに増やすことができます。

植物が消費する二酸化炭素は1時間に100ppmなので、理想値を1500ppmとして補給基準値を1300ppmとします。通常の空気中に含まれる二酸化炭素の値は300ppmだということを念頭に置いておいてください。換気率(漏れも含む)は、一般的な栽培室や温室の換気率と同じく2時間で100%とします。多くのすき間や漏れがある場合には、換気率がかなり上がって300ppm以上に補給した二酸化炭素も失われます。換気扇を使うと補給してもそのまま排出されてしまうので、二酸化炭素補給装置を使う意味がなくなってしまいます。

栽培室や温室の中の空気を循環させる扇風機は効果的です。空気が動かないと「空乏層作用」が起こります。この作用は、植物が葉周辺の二酸化炭素をすぐに消費し尽くして二酸化炭素不足を起こします。二酸化炭素を含んだ新鮮な空気が葉の表面に運ばれてこないと、光合成が弱まり最終的には中断してしまいます。

二酸化炭素を理想値に保つ方法にはいろいろあります。

  1. 温室や栽培室がちゃんと密閉されてないなら、二酸化炭素補給装置の補給率を50%増やす。
  2. 気温が20℃から30℃にあがったら、補給率を20%増やす。さがった場合は同様に減らす。
  3. 室内にいっぱいになるほどに育てている場合は、補給率を20~30%増やす。

二酸化炭素の補給量を決定する最終的な要素は、栽培室のサイズです。ガス燃料を燃やす場合は、下記の計算式で簡単に求められます。基準栽培室は、高さ・幅・奥行き2メートルで、体積は8立方メートルになります。お使いの栽培室が高さ3メートル×幅3メートル×奥行き6メートルならば、体積は54立方メートルになります。エチルアルコール+ガスランプ方式を二酸化炭素補給に使うには、8立方メートルの栽培室でアルコール重量20グラム/日で1300ppm、という割合を使って求めることができます。

20グラム/日 :  8立方メートル
----------------------------------
  ?オンス/日 : 54立方メートル
たすき掛け算をして、
    8X? = 20×54
      ? = (20×54)÷8
      ? ≒ 135 グラム
ということで、3メートル×3メートル×6メートルの体積54立方メートルの栽培室の二酸化炭素を1300ppmに補給するには、1日につきエチルアルコールが135グラム必要ということになります。

同じ栽培室で、さらに200ppmの二酸化炭素を補給して1500ppmにするためには、上記の比率を使って求めます。
 
1300ppm  : 135 グラム
-----------------------------
  1500ppm :  ? グラム
たすき掛け算をして、
  1300×? = 135×1500
       ? = (135×1500)÷1300
       ? ≒ 155.77 グラム
ということで、3メートル×3メートル×6メートルの体積54立方メートルの栽培室の二酸化炭素を1500ppmまで補給するには、1日につきエチルアルコールが1155.77グラム必要ということになります。

異なる炭化水素燃料を使う場合には、発熱量(カロリー)に関して十分考慮しなければなりません。発熱量/時(ワット)がエチルアルコールの半分の割合なら、二酸化炭素を理想値に近づけるために2倍量を燃焼させて補給することになります。二酸化炭素補給の必要量は、使用する燃料の炭素含有量によって異なります。発熱量(カロリー)、発熱量/時(ワット)は、器具の購入元や説明書などに記載されています。

2.圧縮して詰められた二酸化炭素(液化炭酸ガス)を使う

炭酸ガス補給の方法としては一般的で、かなり精密にコントロールすることができる。圧縮炭酸ガスは、液化炭酸ガスとして、金属製のシリンダーに高圧で充填されて提供されます。入手しやすく扱いやすいガスボンベは2.5〜7キログラムが標準です。圧力は1600〜2200PSI(ポンド毎平方インチ)である。

液化炭酸ガスを使って二酸化炭素を補給するには、以下の設備が必要です。

  1. 液化炭酸ガスのボンベ
  2. 圧力を調節するレギュレーター
  3. 流量計 (フローメーター)
  4. 電磁弁 (プラスチック製か金属製)
  5. 24時間のON/OFFプログラムタイマー
  6. チューブ (設置用と接続用)

注記 :標準状態における重量1キロの二酸化炭素は、およそ19.2立方フィート(約544リットル)に相当します。

液化炭酸ガス装置の準備
これはあらかじめ設定しておいた時間間隔で、調整された二酸化炭素量を栽培室に注入するという方法です。圧力を調節するレギュレーターは、ガスボンベの気圧を2200PSIから流量計で制御できる圧力(100~200PSI)に減圧します。流量計は、電磁弁がONになっている時間に立方フィート/分(CFM)で設定された大量の二酸化炭素を送り込みます。プログラムタイマーは、昼時間の長さと電磁弁のON時間の間隔を調節します。

ここでは、装置の目盛りがフィート法であることが主なので、高さ・幅・奥行き8フィートの栽培室をもちいて説明します。実際的なメートル法の数値が必要な場合は、当社ガーデンサプライオンラインストアのアーカイブ「CO2流量計算プログラム」をお使いください。

この液化炭酸ガス装置を、高さ・幅・奥行き8フィート(約2.44メートル)の栽培室で使うときは、枯渇しはじめる200ppmから1500ppmに上げるのに十分な二酸化炭素を加える必要があります。そこで、体積512立方フィート(約14.5立方メートル)の栽培室に1300ppmの二酸化炭素を加えることになります。そうして、植物の消費分と栽培室から 漏れ出す二酸化炭素を考慮して、一定間隔で二酸化炭素を注入して約1500ppmをキープするようにします。

注入する時間間隔(炭酸ガス補充時間)を2時間おきに設定しよう。まず、512立方フィートの容積の栽培室内の二酸化炭素を200ppmから1500ppmに増やすために追加する二酸化炭素の量を計算する。この計算では、栽培室の512立方フィートの容積は0.0013 ( 1300ppmを掛けると必要な容積=0.66立方フィート、となります。レギュレーターの値を100PSIに、流量計の値を0.33CFM(立方フィート/分)に、または値を20CFH(立方フィート/時間)に設定します。したがって、タイマーを2時間ごとに2分間ONに設定した場合、最適値150 0ppmを維持するために必要な0.66立方フィートが補充されることになります。

液化炭酸ガス1kgは、大気中の約19.2立方フィート(544リットル)の炭酸ガスに相当します。液化炭酸ガスは、1キログラムあたり約450円で提供されます。日中18時間、2時間ごとに0.66立方フィートの割合でガスを補充した場合、維持費は1日あたり約1.0円です。4円です。タイマーは日中の明るい時間帯に電気をつけているときだけにしてください。植物は光があるときだけCO2を消費することができます。植物は暗いとCO2を消費できません。

この液化炭酸ガス補給方式の長所は、かなり正確にコントロールできることと装置(設置費用 3~5万円)が簡単に手に入ることです。また、栽培室内に余分な熱を加えず、小規模な栽培室にも効果的です。しかも、はじめの設備投資以降の維持費はそれほどかかりません。

3.ドライアイスを使う

この方式は小さな栽培室、とくに冷却すべき栽培室におすすめです。ドライアイス(固形二酸化炭素)は、-78.5℃と非常に冷たく、取り扱いには手袋の着用が必須です。ドライアイスは氷屋や精肉店など食材卸業者から購入できて、値段も比較的安価です。

高さ・幅・奥行き2メートルの基準栽培室では、1300ppmになるように補給するのに、一日につき約200グラムが必要です。栽培室がかなり暖かい場合は、200グラムのドライアイスは18時間よりずっと早く溶けてしまいます。これをコントロールするには2つの方法があります。まずは、250グラム程度を小さくカットして、2時間ごとに栽培室に加えていくという方法です。もうひとつは、断熱発泡スチロールの箱に小さな穴をいくつか開けてドライアイスを必要量だけ入れる方法です。この方法は溶ける速度をかなり減速しますが、照明点灯時間の18時間で200グラムが溶けるという速度を「よく理解して」おかなければなりません。余ったドライアイスは、昇華して消失するのを防ぐために、冷凍庫に保管しておきます。

二酸化炭素は空気より重たいので、それを利用して植物に分配するためには、ドライアイスまたはその容器を、植物の上にたいてい設置してある照明反射板に取り付けるという方法があります。二酸化炭素が照明の上から流れ落ちて植物をむらなく浸します。循環用扇風機を使っている場合には、ドライアイスまたはその容器を、その扇風機の直前か直後に設置して均等に分配できるようにします。どの二酸化炭素補給方式にも共通することですが、栽培室や温室の密閉には最善を尽くしてください。とくに出入口や壁の下部には最大限の努力をしてください。

4.発酵させる

砂糖は、イースト菌の作用による発酵でエチルアルコールと二酸化炭素に変化します。この方式には、以下の材料が必要です。

1.適当なサイズの容器 (プラスチック製かガラス製)
2.砂糖 (白砂糖か転化糖)
3.イースト、醸造用
4.イーストフード
5.シーリング材、セロファンテープ、ふた
6.プラスチックチューブ 1/4規格
7.密閉弁 1/4規格
8.風船
9.ジャー、もしくはビン

この発酵方式は、二酸化炭素の補給にとても効果的で費用も比較的かかりません。白砂糖やイーストはどこでも安く売られています。発酵方式の詳細は、ただいま編集中ですので、後日アップします。

5.有機物を腐らせる

有機物がバクテリアの活動によって腐食分解されると、二酸化炭素が発生する。熱帯ジャングルの植物は、青々とした葉を茂らせて元気に育っています。これは、植物や動物の死骸が盛んに自然浸食されているためである。この腐敗により、有効二酸化炭素は1000ppm以上にも増加する。また、同じ技術を使うことも可能です。この環境は室内でも再現可能です。コストはほとんどかからないが、臭いが発生し、衛生的とはいえない。このような理由もあり、あまりお勧めできません。水耕栽培システムが最適に設置された栽培室や温室は無菌状態であり、不要な細菌や害虫の発生により害を及ぼす可能性があります。

要するに、これらすべての方式は適切に設置されれば機能しますし、二酸化炭素補給を実施することは、室内栽培にとても効果的です。実用的な方法、費用のかからない方法、時間と注意を要する方法とさまざまですが、すべての化学反応にはかならず温度が関わってきます。光合成も例外ではありません。38℃以下の高温の環境で二酸化炭素の補給を行うと光合成が活発になるので、より多くの光が必要です。また、より多くの水と栄養素も必要になります。 ときには二酸化炭素補給によって、予想をはるかに超えた驚くべき成長を調整するために剪定の必要もありうるのです。

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